腰痛放浪記 椅子がこわい

夏樹静子さんの書かれた本で、椅子がこわいという本がある。 腰痛に悩まされ、特に椅子に座ることが苦痛だったのである。

腰痛患者にはよくある事だと思う。特にヘルニア等椎間板由来だと座る方が椎間板に圧がかかるからだと思う。夏樹静子さんの場合は心因性だったわけだが。

梨子も椅子に座る方が苦痛である。
事務仕事の為、座って仕事をしていたが、とても苦痛だった。

ある日、座るのが苦痛なら立てばいいじゃないか、とスタンディングデスクに変えた。 名案を思い付いたような清々しい気持ちだった。


いつもの会社の机にIKEAで買った¥900くらいのミニ机を載せ、パソコン等をその上に置いた。 そして私は立つ。 パソコンの位置も丁度いいし、これで良くなるだろうと思った。 

しかし、何故か立っていても痛かった。 また少し、座った時とは違うかんじに痛い。 立っているから疲れるのとは違う。

左足はなんとも痛くない、多少疲れるだけ。 右足が普通に坐骨神経痛で痛い。 座るよりましかもしれないが、また違った痛さがある。 


結局じっとしていると立っていても痛いのだ。 夏木静子さんの、「長く坐っていられないような者には、立っていることも相当な負担なのだった。」(夏樹静子著 腰痛放浪記 椅子がこわい 新潮文庫P31)という一節を思い出した。

腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)

腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)

 

彼女は立って囲碁をするために専用の台を作ったのだが、いざ打とうとするとずっと立つことができず、少し打っては座り、打っては立ち、を繰り返したのだ。  


歩きだすと痛みが弱くなる。 止まってじっとすると痛くなる。
事務仕事はどうしても、座っていても立っていても、作業する時はじっとしてしまう。 どうすればいいんだ。
お昼休みになると梨子はヨガマットを会議室に敷いてリハビリで言われた運動をしている。 女性社員は会議室でお弁当を食べるので、最初はみんな笑ってみてくれていたが長い期間痛がってまじめにやっているのでなにも言わなくなった。

会社の飲み会も座っているのが苦痛で欠席するようになった。
いつも私の腰を茶化していた先輩がよそよそしくなってしまった。

「坐ること自体が苦痛という病人は、親しい人と会食し、お酒でも飲んで、いっとき憂さを晴らすことも許されないのである。」(同書 P11)
夏樹静子さんのこの言葉に私はとても共感している。