筋ジストロフィーの同級生

小学4年から高校卒業まで、筋ジストロフィーの同級生がいた。

梨子が小学4年生で初めて会った時は、彼はもう車椅子だった。

ある日彼は学校の廊下で倒れて泣いていた。
自分の足でトイレまで行こうとしたらしい。

他の男の子が、「あいつ、去年までは普通に歩けたんだよ?どうして・・・」といっていた。

梨子はとても残酷な光景だと思った。

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当時の国語の教科書で、題名は忘れたが、こんな一節があった。

「幸せだ、だって僕らは五体満足なのだから」

先生はこの文を音読してから、これはそうとは限らないけど・・・などと言葉を濁していた。そんなふうに変に濁すならこの話はこのクラスではやらなければいいのにと思った。

梨子やまわりの同級生は、学年が上がるにつれ出来る事が増えていった。
体も成長する。先生たちは、将来の夢を持つことが大事だと教えていた。

対して、彼は学年が上がるにつれ身体的に弱くなっていった。

勉強はよく出来ていた、頭は良かったと思う。

将来の夢を書く作文で、思春期の彼は何を書いていただろうと今になって思う。